発想を変えてみる
6月も下旬に差し掛かり、部活も終了したという中高3年生の方もきっと多いことでしょう。勝負の夏!と言われる時期を目前に控え、受験勉強のために塾を探しているという方々もいらっしゃると思います。これから塾を探そうという方にとって「一体どんな塾なんだろう?」という疑問はある程度ネット検索で解決出来る時代となりました。「××市 ◯◯塾 中学生 高校生」等のワードで検索すれば、塾の立地、教室の設備、授業料、合格実績、授業評価など豊富な情報を得ることが出来ます。多くの方々はこれらの情報を参考に体験授業に行く塾を探し、実際に体験授業を受けて入塾するか否かを決められることでしょう。
今回はそんな普通の塾探しという視点からでは気づきにくい、新しい切り口の塾情報の検索のやり方をお伝えしようと思います。とは言っても難しいことではありません。それは発想を変えて塾の求人情報を調べてみるということです。塾を探す際には生徒側の視点から情報を集めることが多いかと思いますが、発想を逆転させて働く側の視点から情報を集めることで見えてこなかったものが見えるようになることがあるのです。当塾のように一人でやっているような、求人を出す必要がないほど小規模な塾だとこの手法は使えない(というより使うまでもない)のですが、求人を出す余裕がある有名な大手塾などを候補にお考えの方にはお役に立てる情報ではないかと思います。
塾の求人情報からわかることは?
実際に塾の求人情報を調べてみて目にする求人例を2つほど挙げてみましょう。まずは大規模展開している個別指導塾の求人で多く目にするタイプのものです。
求人例その1
◯◯塾では一緒に働いて下さる講師を募集しています!
・未経験者歓迎!充実の研修制度とマニュアルで安心して働いて頂けます
・勤務は週1日1コマからOK!自由度の高いシフトでプライベートとの両立が可能です
・副業歓迎!主婦・主夫の方の隙間時間の活用にもピッタリ!退職後の生き甲斐にも!
・生徒と共に成長していくやり甲斐と感動を味わうことが出来ます!
・コマ給(85分)1800円〜、勤務実績に応じて昇給制度あり
※応募資格:専門学校・短大・4年制大学・大学院に在学中または卒業された方
塾講師として働くことを考えている場合、この求人に対しておそらく以下のような印象を抱く方が多いのではないかと思います。
ではこの求人情報を塾を探す側の視点から眺めてみると、どのような情報が得られるのでしょうか?
次にあまり大規模展開していない個別指導塾で見られるタイプの求人の例です。
求人例その2
◯◯塾では一緒に働いて下さる講師を募集しています!
・経験者歓迎、未経験の方にも安心して働いて頂けるよう研修制度も充実しています
・週3日以上安定して勤務頂ける方
・コマ給(85分)3000円〜、勤務実績に応じて昇給あり
・英検やTOEIC等の資格試験で一定以上の成績を収めている方には別途インセンティブ報酬が発生します
※応募資格 4年生大学・大学院に在学中または卒業された方
一つ目の例と同様に塾講師として働くことを考えている場合、こちらの求人に対しては以下のような印象を抱く方が多いのではないかと思います。
では塾を探す側の視点からこちらの求人情報を眺めてみると、どのような情報が得られるのでしょうか?
いかがでしょう。2つの求人例を眺めてみると、それだけでも随分と違う印象を受けると思います。もちろん感じ方は人それぞれだと思いますが、通う塾を探すという立場から見てみると2つ目の求人例の塾の方がなんだか安心して通塾できそうな気がしてきませんか?ここに載せた求人はある意味対極に位置する2例ではありますが、文言や数字は多少違うにしても実際に存在するケースです。生徒募集のために発信されている情報ではなく、求人のための情報を見てみるとこんなことが分かってきたりします。
講師のコマ給(時給)に特に注目してみましょう
上記の例の中で、生徒一人あたりの講師の報酬額について記述しました。実はこの情報こそ求人募集を見ないと分からない、塾のスタンスを推し量るのに重要な情報だったりします。
たとえば求人例に挙げた塾のケースで授業1回あたりの料金がどちらも4500円の塾だった場合、お月謝を払うご家庭の立場からは当然その金額に見合った授業内容を期待されると思います。ところが教える立場の講師にとっては、担当生徒一人あたりからの報酬は一つ目の例では600円(授業料の約13%)、二つ目の例では1000円(授業料の約22%)ということになります。払う授業料が同じ4500円であっても、実際に授業を担当する講師の立場からするとその金額の受け止め方が変わってくる可能性があるんですね。
このように授業料に対する講師の報酬額の割合を考えた時に、割合を高めに設定している塾ほど授業の内容を重視している信頼の置ける塾である可能性が高いと言えます。非常に乱暴な例えですが、原価率20%のラーメンより原価率35%のラーメンの方が味にこだわっているお店ではないかと期待出来ますよね。ラーメンを授業に、原価率を講師への報酬割合に置き換えてみれば、講師への報酬を重く見ている塾ほど授業内容を重視している良い塾ではないかと予想出来るわけです。塾の本質たる授業に重きを置いているのか、あるいは広告宣伝や本部へのロイヤルティ、経営者の報酬等に重きを置いているのか。単純にそこで働く講師がどの程度の金額を報酬として受け取っているかということ以上に、教育に対する塾のスタンスそのものが講師のコマ給(時給)設定に現れてくるというわけです。これは求人情報を見てみないと中々気づきにくい点かと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。普通は学生側の立場から塾の情報を探そうと思ったら、敢えて求人情報を検索するということはほとんどないと思います。しかし勉強等と同様に、スポットライトを当てる角度を変えてあげると別視点からの思いもよらない情報を引き出すことができるのです。
もちろんここに書いてあることは一例に過ぎません。求人情報からネガティブな印象を受けたとしても、実際に体験授業を受けに行ってみたら素晴らしい塾だったという可能性だってもちろんあり得ます。塾を探して体験授業に行かれたら、何か疑問点がある場合はその塾の塾長や教室長といった肩書きの方に遠慮せずにしっかりと質問をされることをおすすめします。
また、今回取り上げたのは基本的に個別指導の場合の例ですので「集団塾はどうなの?」という疑問を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。結論から申しますと「集団塾の場合はそこまで細かく考えずとも雰囲気の合う塾に行ってほぼ問題ない」ということになるのですが、そこら辺の理由に関してはまた別の機会に書かせて頂こうと思います。